Message from professor
私たちの教室にとって、臨床に立脚し、臨床を中心にすえ、臨床の役に立つことが、何よりも大切です。そのために、教室員一同、京都大学医学部附属病院の一員として、日々の診療に励んでいます。 消化器内科が対象とする臓器は、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肝臓、胆嚢、膵臓と多岐にわたり、領域も炎症、免疫、機能性疾患、代謝、癌など実に多彩です。これだけの範囲をカバーする技術と知識を両立させながら、急速に高度化、細分化する消化器診療に対応するためには、多数の優れた人材を育成し、その力を結集することが欠かせません。そのうえで、ひとりひとりの患者さんを総合的な視点から診ることが求められています。幸い、教室創設以来20年の時を経て、広範な消化器診療をカバーし、全人的な医療を提供する体制が整って参りました。
今後は、京都大学医学部附属病院、そして豊富な関連施設との連携を通じて、京都市および近隣の基幹医療施設としての役割を果たしつつ、最先端医療の開発に取り組んで参ります。そして、それぞれの患者さんに最適な、最先端の医療を提供する高度医療施設として、さらに発展を続けたく思います。世界へ向けた情報発信に努めると同時に、京都市、近隣の内科診療、消化器内科診療に従事されている先生方との病診連携、病病連携を深め、地に足のついた医療を展開していきたく思っております。どうぞ宜しくご指導とご厚情の程、お願い申し上げます。
京都大学大学院医学研究科・消化器内科学講座は、日々の臨床、研究、教育のあらゆる過程を通じて、皆さんに消化器内科領域の広さと深さ、そして生涯を通じて消化器内科領域を対象とすることの醍醐味を伝えていきたいと思っています。
臨床面では、消化器内科は、ほぼ全身をカバーするほどの広範な領域を対象としています。患者さんやそのご家族を含めた、全人的な医療を心懸けることも大切です。一方、消化器内科は、内科領域の中でも技術を重視する診療分野のひとつです。専門医制度の改変を機に、内視鏡、超音波関連の様々なデバイスを駆使した診断、治療技術の習得について、京都大学医学部附属病院およびハイボリュームセンター揃いの関連施設での研修システムを一層整備、充実させています。医学生から専攻医、専門医に至るシームレスな研修システムによって、消化器内科領域の重要性と魅力を伝えたいと思っています。
研究面でも、京都大学という恵まれた研究環境のなかで、炎症、免疫、機能性疾患、代謝、癌など、あらゆる分野を対象として、臨床研究、基礎研究を積極的に展開しています。実際、消化器内科を専攻する多くの若手医師が、毎年大学院に進学し、自身の興味に応じて、多彩かつ先進的な研究を行っています。
このように、大学の重要な役割のひとつに、若手からベテランまで、医師、研究者としてのキャリア・プランニングを手助けし、また仕事とプライベートを両立させる工夫を行うことがあると考えています。幸いなことに、京都大学には自由と自主独立を許容し、重んじる学風があります。その伝統は私たちの教室にも脈々と受け継がれています。出身大学や経歴にかかわらず、消化器内科領域の臨床、研究、教育をこころざす医学生、医師を広く歓迎しています。教室員全員が、それぞれの考え方ややりたいことを自由に伸ばしつつ、それらのベクトルの総和が全体を一層向上させるように努めたく思います。
消化器内科学講座は、20歳を過ぎたばかりの非常に若い講座です。臨床、研究、教育の体制は充実してきましたが、スタッフ、大学院生、専攻医、研修医、皆とても若い世代が中心となって活動しています。これからの伸びしろは幾らでもあると思っています。いたずらに流行を追い求めたり、目先の結果にこだわるあまり、本質を見失うこと、オリジナリティーを失うようなことは致しません。高いレベルの消化器臨床を提供し、独自性の高い優れたサイエンスを世界へ向けて発信しながら、次世代を担う人材とともに歩んでいきたいと考えています。皆さんとの新しい出会いを、心から待ち望んでいます。
平成30年4月1日
京都大学大学院医学研究科・消化器内科学講座・教授
妹尾 浩