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Research at Kyoto Gastroenterology

臨床から問いを立て、病態の成り立ちと変化を解き、診療へ返す

消化器疾患を診療していると、教科書だけでは答えられない多くの疑問に出会います。

  • なぜ、この病気が生じるのか。
  • なぜ同じ病気でも、進行する患者さんとしない患者さんがいるのか。
    なぜ同じ治療が効く人と効かない人がいるのか。
  • より早く診断し、その後の経過を予測することはできないか。
  • そして、重症化や発がんそのものを防ぐことはできないか。

京都大学消化器内科では、こうした臨床の現場から生まれる問いを研究の出発点としています。対象とするのは、消化器がん、肝疾患、炎症性腸疾患をはじめとする幅広い消化器疾患です。私たちが重視しているのは、病気の一時点だけを切り取って調べることではありません。病気がどのように始まり、時間とともにどのように変化し、患者さんごとの異なる経過や治療反応へつながるのか。その過程を、分子、細胞、組織、個体、患者集団というさまざまな階層から理解しようとしています。
そのために、

  • 患者さんからいただく組織・血液などの臨床検体
  • 患者さん由来のオルガノイド
  • 遺伝子改変マウスなどの疾患モデル
  • ゲノム・エピゲノム解析
  • シングルセル解析・空間解析
  • 免疫学・自己抗体解析
  • 血液バイオマーカー
  • レセプトをはじめとするリアルワールドデータ
  • 多施設臨床研究

など、多様な研究手法を組み合わせています。 患者さんで見つかった現象から問いを立て、モデルやデータを使って仕組みを解き、その結果を再び患者さんへ還元する。この往復を通じて、疾患の理解だけでなく、より早い診断、より適切な治療、そして将来の予防につながる研究を目指しています。

私たちの研究...

1. 消化器がんの自然史を再現する

Cancer Natural History / Precancer / Organoids / Tumor Microenvironment

私たちはほとんど全ての消化器がんについて、正常組織から前がん病変、早期がん、進行がん、転移へ至る自然史そのものを研究対象としています。

患者さんにいただいた臨床検体に加え、患者さん由来のオルガノイド、遺伝子改変マウス、3次元培養モデルなどを用いて、ヒトで起こる発がん・進展の過程を実験的に再現します。

また、がんの進展はがん細胞だけでは決まりません。線維芽細胞、免疫細胞、細胞外マトリックスなどからなる微小環境が、発がんの過程でどのように形成・変化するかを、シングルセル解析や空間解析を用いて研究しています。

「できあがったがん」だけを見るのではなく、がん細胞とその周囲の環境が時間とともにどのように変化し、がんが成立・進展していくのかを再構成して理解することが、私たちの研究の大きな特徴です。その理解を、発がんリスクの予測、早期診断、さらにはがんになる前の段階での予防や新しい治療につなげることを目指しています。

2. 肝疾患を、原因から進展・治療まで理解する

Viral Hepatitis / MASLD & MASH / Hepatocarcinogenesis / Clinical Research

私たちは、B型・C型肝炎などのウイルス性肝疾患、MASLD/MASH、慢性肝炎・線維化、肝硬変、肝がんまで、肝疾患が時間とともにどのように生じ、進展するのかを幅広く研究しています。

ウイルス性肝炎では、HBV感染の成立・持続に関わる宿主因子や、免疫抑制治療・抗がん治療に伴うHBV再活性化、さらにウイルス排除後に残る肝障害や発がんリスクなどを、基礎研究と臨床研究の両面から解析しています。

MASLD/MASHでは、独自の疾患モデルなどを用い、代謝異常、炎症、線維化に加えて、腸内細菌叢や胆汁酸、腸管バリアなどのGut-Liver axisが病態進展に果たす役割を研究しています。

さらに、慢性肝障害から肝発がんへ至る分子・ゲノム変化を解析するとともに、肝細胞がんの薬物療法について国内外の多施設臨床研究を進めています。

ウイルス・代謝異常から慢性炎症、線維化、発がん、治療までを一つの連続した病態として捉え、どこでその進展を予測し、止められるかを明らかにすることを目指しています。

3. 炎症と免疫から消化器疾患を解く

IBD / Autoimmunity / Autoantibodies / Immune-mediated Diseases

炎症性腸疾患や原発性硬化性胆管炎をはじめとする消化器臓器の免疫疾患では、同じ診断名であっても病態や治療反応は大きく異なります。私たちは、患者さんの血液や組織を起点として、免疫応答の違いが疾患の発症、重症化、治療反応にどのように関与するのかを研究しています。

その一つが、潰瘍性大腸炎患者さんで見いだされた抗integrin αvβ6自己抗体です。 この自己抗体について、潰瘍性大腸炎の診断、将来の治療強化の予測、原発性硬化性胆管炎、免疫チェックポイント阻害薬による腸炎などへの展開を進めています。

さらに、患者さん自身のB細胞からモノクローナル抗体を作製し、その抗原認識や機能を解析することで、「自己抗体を測る研究」から、「なぜその抗体が生まれ、病態に何をしているのか」を解く研究へ発展させています。

臨床で見つけたバイオマーカーを、もう一度基礎研究へ戻して病態機序を解く、その理解を再び診断や治療へ還元する。私たちの研究スタイルをよく表す取り組みの一つです。

4. 血液から病気をより早く、より正確に捉える

Biomarkers / Liquid Biopsy / miRNA / Early Detection

病態を理解する研究は、新しい診断法の開発にもつながります。特にがんでは、症状が現れてから診断される段階では、すでに進行していることが少なくありません。

この問題を解決するために、私たちは血清中のmicroRNAを網羅的に解析し、機械学習と組み合わせることで、膵がんを血液から検出する診断法の研究を進めています。CA19-9やApolipoprotein A2 isoformなど既存・新規マーカーとの比較、多施設検体による検証を行い、特に早期膵がんをどのように捉えるかを重要な課題としています。

また、血液中の自己抗体も、疾患の診断や予後予測につながる重要なバイオマーカーです。私たちが目指しているのは、単に新しいマーカーを見つけることではありません。なぜそのマーカーが変化するのかという病態研究と、実際に患者さんを診断できるかという臨床研究を結びつけることを重視しています。

将来的には、消化器疾患の自然史の理解とバイオマーカーを組み合わせることで、病気を見つける医療から、病気を予測し、先回りする医療へつなげたいと考えています。

5. リアルワールドデータから、実際の医療を研究する

Real-World Data / Claims Database / Clinical Epidemiology

研究の対象となるのは、細胞や組織だけではありません。日本の医療現場で日々蓄積されるレセプトデータや診療情報には、非常に多くの患者さんの診断、検査、治療の経過が記録されています。私たちは、社会医学や医療情報などの先生方と連携し、これらのデータを用いた臨床疫学研究を進めています。例えば、診断コードだけでなく、内視鏡治療、外科手術、薬物療法、検査などの情報を組み合わせ、胃がんや大腸がんの新規発症例や病期・進行段階を高い精度で同定するアルゴリズムを開発しています。

その先には、検診や診断経路、治療選択、長期予後、地域差、医療資源、医療費など、通常の単施設研究では答えにくい問いがあります。 分子や細胞からみるbiological natural historyと、大規模な患者集団からみるclinical natural history。異なるスケールの研究をつなぐことで、疾患を立体的に理解し、よりよい医療につなげることを目指しています。

研究をしてみたい臨床医の先生方へ

研究テーマを完成させてから大学に来る必要はありません。

  • 外来で経験した患者さん
  • 内視鏡で見た病変
  • 予想とは異なる経過をたどった症例
  • 期待した治療が効かなかった患者さん

日時臨床から生まれる「なぜだろう」が、研究の出発点になります。京都大学消化器内科には、患者さんにいただいた検体、オルガノイド、動物モデル、免疫学、ゲノム解析、シングルセル・空間解析、データサイエンス、臨床疫学など、多様な方法でその問いを追究できる環境があります。一人ですべての技術を身につける必要はありません。臨床医だからこそ見つけられる問いを、異なる専門性をもつ研究者と一緒にScienceへ変えていく。そして得られたScienceを、再びClinical practiceへ戻していく。それが、私たちの目指す研究です。

共同研究をして下さる皆さまへ

私たちは、消化器疾患の臨床検体と臨床情報、前がん病変を含む患者さん由来のオルガノイド、さまざまな疾患モデル、大規模臨床データを基盤として、医学研究科内外の研究者との共同研究を進めています。

免疫学、発生生物学、幹細胞生物学、ゲノム科学、工学、数理科学、AI・データサイエンス、創薬、診断技術など、異なる分野との融合から新しい研究が生まれると考えています。

特に、ヒト疾患で見つけた現象を実験モデルで再現し、機序を明らかにして、再び患者さんい還元することは、私たちの研究基盤の大きな特徴です。

疾患モデルや臨床検体を必要とする基礎研究者、医療データとの接続を考えている研究者、新しい診断・治療技術の臨床応用を目指す研究者の皆さまとの共同研究を歓迎しています。

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